■ベース拡大は“確実に影響する”が、それだけでは語れない
今季、リクエスト制度の変更と並んで導入された大きな変化がある。リクエストとは異なり、一般のファンが観戦するうえでは、その変化ははっきりとは感じられないかもしれない。
それが、一塁〜三塁のベースサイズの拡大だ。
従来の15インチ四方から18インチ四方へと変更され、塁間距離はわずかながら短縮された。ベース1辺で見れば約7.6cmの差だが、塁間に換算すると一塁から二塁、二塁から三塁はそれぞれ約11.4cm縮まった。
数字としては小さく見えるが、走塁においてこの差は決して無視できるものではない。昨季までならアウトになっていた「際どいタイミング」が、逆にセーフに変わる可能性があるからだ。
当然、開幕前から盗塁数の増加を予想する声は多かった。では、実際に、その影響は数字として表れているのか。結論からいえば、影響が出ている可能性は高い。ただし、その解釈は単純ではない、となるだろうか。
■セは増加、パは減少——“同じルール”で起きた分断
2016年から昨季までの直近10年と今季の1試合平均盗塁数の推移を示す。


※2016〜2025年と2026年の1試合平均盗塁数の推移
まず目を引くのは、セ・リーグの急増だ。
DH制がないセはもともとパ・リーグと比べると盗塁数が少なく、かつ減少傾向にあったことが見て取れる。近年は球速の上昇など投手力の向上によって出塁自体が難しくなり、「投高打低」といわれる傾向が続いてきた。
世界の盗塁王こと福本豊(元阪急)の「塁に出られんことには盗塁でけへん」という名言そのままの状況を示しているといえるだろう。
それが、今季は明確に跳ね上がっているのだ。塁間短縮という後押しを受けて、各球団が、「出塁→仕掛ける」という積極性を取り戻している可能性は十分にある。
一方で興味深いのが、パ・リーグの動きだ。こちらはセとは対照的に、今季はむしろ盗塁数が激減している。セ・リーグと比べてシーズンごとの変動幅は大きいものの、それでも緩やかな減少傾向という点では両リーグは共通していた。そのなかでこの「逆行」である。
同じルール変更のもとで、ここまで異なる結果が出ているという事実は興味深い。単純に「ベースが大きくなったから盗塁が増えた」と結論づけるのは早計だろう。戦術のちがい、チーム構成、あるいは単なるシーズン序盤のブレ——複数の要因が絡み合っている可能性もあるはずだ。
もちろん、まだシーズンははじまったばかりである。この数字がそのままリーグごとの傾向として定着していくのか、あるいは両リーグとも最終的には事前の予想どおり盗塁増加となるのか。
ベース拡大という“静かな変化”がどのようなかたちで表れるのかは、もう少し時間をかけて見極める必要がありそうだ。
文/清家茂樹
※数字は2026年4月20日終了時点
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