投手力に陰りが見えても、阪神が勝てるわけ
2026年5月4日終了時点でセ・リーグ首位に立つ阪神。下馬評を覆して躍進中のヤクルトと激しい首位争いを繰り広げているために「昨季ほどの圧倒感はない」とも映るが、貯金8という数字は、史上最速優勝を果たした昨季の同時期(貯金3)を上回る。ヤクルトとは異なり、こちらは下馬評どおりの強さを見せているというわけだ。
昨季の阪神は、どちらかといえば投手力中心のチームだ。得点こそリーグ2位だったものの、打率は4位、本塁打も3位にとどまった。一方で投手陣は、村上頌樹、才木浩人の両輪に加え、救援防御率1.96のリリーフ陣が支えるまさに盤石の構成であった。
ところが、今季はその投手陣に若干のほころびが見える。チーム防御率3.39はリーグ4位と、近年の阪神らしからぬ数字だ。とくにリリーフ陣に関しては石井大智の離脱や及川雅貴の不調もあり、救援防御率は3.66と大きく悪化している。
にもかかわらず阪神が好調なのは、今季は逆に打線がチームを牽引しているからだろう。森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔のクリーンアップは12球団でも屈指の破壊力を誇る。佐藤が3冠である他、森下は本塁打2位タイ、打点では大山が3位にランクインしている。
ただ、こうした「派手でわかりやすい数字」以上に注目したいのが出塁率だ。野球という競技には、出塁できないことには得点できないという明快なロジックがある。
そして、阪神の.348という出塁率は、リーグ平均.310を大きく上回る。とはいえ、打率はそれほど抜きん出たものではない。.267という数字はリーグ2位ではあるものの、リーグ平均との差は出塁率ほど大きくないのだ。
つまり、安打以外で出塁しているということである。
死球は不可抗力だとしても、ここまでの116四球はリーグ最多であり、99四球で2位のDeNAを大きく引き離している。これはいまにはじまった話ではない。2023年以降、阪神は四球数でつねに12球団トップを維持しているのだ。
岡田前監督が浸透させた四球への意識
そのきっかけとなったのが、多くの野球ファンにも知られているとおり、岡田彰布前監督による査定の見直しだ。2023年の監督再就任時、「四球はヒット1本と同じ」という持論のもと、四球の査定ポイントを単打と同等に引き上げた。
この方針転換によって、大山は前年の59四球から99四球へと大きく数字を伸ばし、「四球王」になるとともに最高出塁率のタイトルを獲得。「四球を選べない1、2番コンビ」といわれることもあった近本光司、中野拓夢も同様にその数字を一気に伸ばした。
結果は、前年の489(リーグ5位)から555(リーグトップ)へと跳ね上がった得点増加と18年ぶりのリーグ制覇である。もちろん、この「四球で出る」というチームのカルチャーは、現在の藤川球児体制でも継続している。
いかに優れた投手陣がそろっていても、石井や及川のケースからわかるようにつねに一線にい続けられるとは限らない。それこそ「水物」とされる打撃に関しては好不調の波があって当然だ。
しかし、四球を選ぶ意識はそうではない。もちろん「スランプがない」ともいわれる走塁や守備ほどではないかもしれないが、たとえ打撃不振のなかでもしつこく粘って四球を選ぶという意識は維持できるものだろう。
「ついに黄金期を迎える」との見方もある阪神。その土台にあるのは、岡田前監督のもとでチームに浸透した「四球」という武器なのかもしれない。
※数字は2026年5月4日終了時点
■筆者プロフィール
清家茂樹(ライター・編集者・野球コラムニスト)
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